あの頃のことを思い出すと、今でも少しだけ胸がざわつく。
でも、結論から言えば……あの仕事を飛んで、本当によかったと思っている。
当時の職場は、いわゆる“普通じゃない環境”だった。パワハラなんて言葉で片付けていいのか迷うくらい、毎日が異常だった。怒鳴り声は日常茶飯事で、人格を否定するような暴言も当たり前のように飛んできた。
一度や二度じゃない。理不尽にキレられて、ビンタされたこともある。
最初は「自分が悪いのかもしれない」と思っていた。もっと頑張れば認められるんじゃないか、我慢すればいつか終わるんじゃないか、そんなふうに考えていた。
でも、違った。
どれだけ耐えても状況は変わらなかったし、むしろ少しずつ悪化していった。心も体も削られていくのが分かっていたのに、それでも「辞める」という選択がなかなかできなかった。
今思えば、あの時の自分はかなり追い詰められていたんだと思う。
だから、ある日限界が来て、何も言わずに仕事を飛んだ。
普通なら「無責任」とか「逃げ」と言われる行動かもしれない。でも、自分にとってはあれが唯一の生き残る手段だった。
もしあのまま続けていたら――たぶん、本当に壊れていたと思う。最悪の場合、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。
今は、あの場所から離れて、少しずつ自分を取り戻している。
あの経験があったからこそ、「ここから離れていい」「自分を守っていい」と思えるようになったのは、皮肉だけど確かなことだ。
世の中には「我慢が美徳」みたいな空気がまだあるけど、命や心を削ってまで続ける価値のある仕事なんて、そうそうない。
逃げることは、負けじゃない。
あの時の自分は、ちゃんと自分を守った。
それだけは、今でも誇っていいと思っている。