「なにも期待しちゃダメ、傷つくだけ」
そう言い切ってしまうのは、少しだけ世界を狭くしてしまう気がする。
たしかに、期待を持つことはときに怖い。
人に期待して、思ったような言葉が返ってこなかったり、努力がそのまま報われなかったりすると、胸の奥がきゅっと痛む。その痛みを避けたくて、「最初から期待しなければいい」と考えるのは、ごく自然な防衛反応だと思う。
でも本当にそうだろうか。
期待することって、そんなに悪いものばかりじゃない。
「こうなったらいいな」と思う気持ちは、何かを始めるエネルギーにもなるし、人を信じる力にもなる。期待があるからこそ、もう一歩踏み出せることもある。
もちろん、現実はいつも優しいわけじゃない。
期待が裏切られる経験は、誰にでもある。けれど、そのたびに「期待しないほうがいい」に寄せていくと、だんだん心の輪郭まで曖昧になっていく気がする。うれしいことに出会っても、それを素直に受け取る感度まで下がってしまうかもしれない。
大事なのは、「期待するか、しないか」の二択じゃなくて、
「どう期待するか」なのかもしれない。
相手に全部を預けるような期待ではなくて、
「こうだったらうれしいな」と静かに置いておくような期待。
それでも違った結果になることはあるけれど、そのときの受け止め方は少し変わる。
期待をゼロにすることは、たぶん安全だけど、同時に何も動かさない状態でもある。
少しだけ期待してみることは、リスクもあるけど、その分だけ世界の色も増える。
結局のところ、傷つく可能性を完全に消すことはできない。
でも、だからといって「期待しないのが正解」と決めつける必要もない。
期待は、なくすものじゃなくて、扱い方を覚えていくものなのかもしれない。